メリット見えないディノスとセシールの合併
フジテレビグループのフジ・メディア・サービスは5月14日、子会社のディノスとの合併を目的にTOB(公開買付け)を通じセシールを買収すると発表した。合併時期は来年4月以降だが、成立後両社の株式交換を行うようになった場合、セシールは上場廃止となる。
フジ・メディア・サービスは今回のTOBについて、「ディノスとセシールの統合シナジーを最大限引き出す」ことを掲げる。通販の基幹媒体であるカタログ事業が頭打ちになりつつある現状下で、顧客リストの相互活用や商品力・メディア力の強化、さらにバックヤードの有効活用および販促経費の低減を目指すという。
ただ、なぜこの時期にディノスがセシールと合併する必要があるのか、その狙いは見えにくい。セシールの筆頭株主であるライブドアホールディングス(LDH)からの合意を取り付けたとしているが、LDHがセシール株の売却を検討しているということはこれまでも通販業界のあちこちで囁かれていた。しかし、ライブドアから迎えた人材力が奏功しEC面は力を付けてきたものの、カタログを軸とした通販事業全体は好調とはいい難い状態で、2008年12月期には4億9000万円の経常赤字を計上。先週には障害者用低料第3種郵便物の不正DM差し出しも発覚するなど、コンプライアンス面でも問題が浮上していた。
一方でディノスは2009年3月期で売上高は前期比3.6%の減収になったものの、販管費の削減などにより、前期は24億2300万円だった営業損失を6億6200万円の利益確保へと黒字転換させた。自力でようやく復調を果たしたディノスが、さらにカタログ事業の不調で厳しい状況のセシールと一緒になっても、プラスの効果が現れるとは考えにくい。
掲げられた合併のメリットについても、かなり疑問がある。顧客リストの相互活用については、ディノスの方が幅広く可処分所得的にも優良な顧客を有しているうえ、セシール以上に多種カテゴリーのカタログを発行。通販という業態上全国の顧客を網羅しており、セシールのバックグラウンドである高松の顧客を特別必要とする理由もない。チャネルについても年間約120億円を売り上げるテレビをはじめ、定期的に催事も手がけるなどクロスメディアでの優位性も高い。バックヤードも自前で大型のコールセンターと物流センターを保有し、現状ではこれ以上のインフラは不要と思われる。つまり、顧客層や媒体、インフラのいずれを取っても、セシールの持つ資産でカバーする必要はないといわざるを得ない。
中でも、最も違和感を覚えるのは、両社の企業体質や企業風土の違いだ。個人が一代で四国という地方に築きあげたセシールと、テレビ局の子会社として首都圏でおおらかに事業展開してきたディノスとの間には、物理的な面だけではなく体質・風土の面でいかにも距離がありすぎる。強いてそれらを乗り越えてまで合併するメリットとは果たして何なのか、現状では見えてこない。
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