ZOZOとロコンドが仕掛けた「DtoC」、若年新規客が拡大し業績アップにも貢献
「ZOZOTOWN」を手がけるZOZOの2021年3月期決算は商品取扱高が前期比21.5%増の4,194億3,000万円、営業利益が同58.3%増の 441億円と、過去最高の増収増益を達成した。営業利益の大幅な伸びは、販管費の減少などによって営業利益率が10.8%と前期に比べ2.7ポイント上昇したことが大きい。
ヤフーが運営する「PayPayモール」における商品取扱高も同354.8%増の281億9,000万円と大幅に増加し、同モールが占める取扱高割合は前期の1.8%から6.7%へと拡大した。ZOZOTOWNに出店している約9割のショップがPayPayモールでも販売し、徐々に売上を拡大している。
3月には「ZOZOTOWN」に新たにコスメ専門モール「ZOZOコスメ」をオープンし、自分で肌の色を計測できる「ZOZOグラス」を無料で配布。申し込みは4月時点で90万件を突破しており、今期の業績を牽引するフックになりそうだ。
今期ZOZOが積極的に進めていくのが、才能やセンス溢れる“個人”とともにファッションブランドをつくるD2C(Direct to Consumer)だ。昨年10月にはD2C事業の「ユアブランドプロジェクト・パワードバイ・ゾゾ」を始動させ、インフルエンサーとの協業ブランド商品の販売を開始している。ブランド立ち上げに必要なすべての工程に「ZOZOTOWN」の知見とネットワークを活用し、全面的にバックアップする。
スタート時に参加した18組に加え、自社のファッションコーディネートアプリ「WEAR」の公認ファッショニスタやZOZOTOWN出店ブランドとも、D2Cブランドの立ち上げを行う。これらD2Cブランドの販売に着手したところ、「ZOZOTOWN」での販売開始から5分程度で在庫切れが相次ぎ、発売当日に全商品が完売したブランドもあった。
靴のECサイト「ロコンド」を運営するロコンドの2021年2月期決算も、商品取扱高が前期比12.7%増の205億6,400万円と伸びた。営業利益についても前期は8,300万円だった損失を一転させて14億3,800万円の黒字を確保するなど、いずれも過去最高となった。巣ごもり消費で主力商品の靴が苦戦したが、昨年買収したECサイト「ファッションウォーカー」やEC支援事業などの売上が貢献した。
また、増収の牽引役として目立ったのがD2C事業で、2020年度のD2C事業は前期より10%以上伸張したとしている。ユーチューバーの「ヒカル」とコラボしたスニーカーのD2Cブランド「リザード」が大人気となり、増収につながった。モデルなどヒカル以外のインフルエンサーをクリエイティブディレクターに据えたD2Cブランドも強化し、靴専門の他社リアル店舗にもロコンドコーナーを設置して攻勢をかけている。
ZOZO、ロコンドとも、国内だけで3兆円が見込まれるというD2Cブランド事業に今期も注力していくとみられる。インスタグラムやユーチューブ、ツイッターなどのSNSで多くのフォロワーを持つインフルエンサーは、商品発信に強い影響力がある。Z世代やミレニアム世代といった若年の新規顧客開拓にも多大な効果を発揮するため、話題作りだけでなく、業績アップを目的にD2Cを仕掛けていくEC企業は今後ますます増えていきそうだ。
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