2021年2月 4日 (木)

巣ごもり消費で家電や日用衣料が好調、昨年の通販・EC市場は8.8兆円まで拡大 有店舗企業が躍進~M&Aの動きも引き続き活発化

新型コロナウイルスによる外出自粛が追い風となり、2020年の通販・EC 市場は成長が続いた。2021年1月に「日本流通産業新聞」が発表した2020年の業界売上高は、前期比8.3%増の8兆8,480億円(上位520社合計・増減率は前年と比較可能な182社での算出数値)となった。巣ごもり消費を受けて幅広いジャンルの商材が伸び、有店舗企業におけるEC比率も拡大した。このような状況はニューノーマル時代の先駆けとなる2021年にも続くとみられ、今年は9兆円市場も射程内に入ってきたといえよう。

2020年で特筆すべきは、消費者の購買行動がリアルからネットへとシフトしたため、有店舗企業の多くがネットも主戦場と考えてEC展開に舵をきったことだ。百貨店や衣料・雑貨系企業、家電量販店、メーカー直営店などがこぞってEC強化に乗り出し、店舗とECの連動に取り組んだ。

中でも、冷蔵庫やクーラー、マッサージ器、パソコンなどを扱う家電販売企業が軒並み好調だった。同紙で市場規模と同時に発表された売上高ランキングでは店舗を持つ大手家電量販店が伸張し、特にビックカメラの勢いが目立った。決算期が緊急事態宣言期間を跨いだこともあり、2020年8月期のEC売上高は前期比 37.5%増の1,487億円と大幅に伸びた。ヨドバシカメラや上新電機、ヤマダ電機など3月期決算の企業ではまだコロナ特需の結果は不明だが、各社とも店舗客へのEC誘導施策をはじめ、送料無料や当日配送といったサービスが奏功し躍進するとみられる。ただ、ランキングにおける家電販売企業のトップは通販専業のジャパネットたかたで、12月期は同2.1%増の2,076億円と前期に続き2,000 億円超えを達成した。

衣料品ジャンルでは通勤・外出用衣料が伸び悩んだ一方で、自宅や近所で着用する手軽な衣料品の需要は高まった。ユニクロの8月期EC売上高は前期比29.3%増の1,076億円と大幅増を達成し、ステイホーム中の日用衣料ニーズの高さが示された。EC売り上げ構成比は前期の9.5%から13.3%へと上昇し、中でも巣ごもり消費時期に当たる下期は前年同期比 54.7%増と大幅な伸びを達成している。

無印良品を手がける良品計画やニトリのEC売上高も、デスクや椅子などの家庭用オフィス商品をはじめ、キッチン用品や収納用品、食品などステイホーム関連商材が好調で2桁増を果たした。

その一方で、カタログを発行する総合通販専業企業では減収が目立った。ベルーナやディノス・セシールをはじめ、千趣会、ニッセン、フェリシモといった老舗企業の売上高は軒並みマイナスだった。各社ともECに軸足を向けてはいるものの、膨張し混戦状態のEC市場では現状維持ですら難しい状況といえよう。

このようなコロナ禍にあっても、業界内におけるM&Aの動きは2020年も引き続き盛んだった。靴のECサイト「ロコンド」を手がけるロコンドは5月、ワールドが保有するファッションウォーカーの全株式を取得すると発表。ECサイト「ファッションウォーカー」を通じて衣料品と顧客基盤の強化に乗り出した。健康食品を通販・ECで手がけるユーグレナは12月、ファンドなど2社とともに老舗健康食品通販企業のキューサイの買収を発表。キューサイの通販ノウハウとユーグレナのベンチャー精神を融合させ、さらなる成長を目指すという。

大手カタログ通販企業にも相次ぎ動きがあり、千趣会は9月、JR東日本を筆頭株主とした資本業務提携を行うと発表した。商品開発やマーケティングなどのノウハウを共有し、EC事業の拡大や駅ナカ店舗の活用などを狙う。ディノス・セシールは11月、セシール事業を売却し、家電量販店大手のノジマ傘下のニフティに同事業の全株式を譲渡することを明らかにした。大手通販企業同士の初合併として2013年にスタートした同社も、押し寄せる時代の波には逆らえなかったようだ。

【日本流通産業新聞社サイト】
https://www.bci.co.jp/nichiryu/article/8157

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2021年1月30日 (土)

「講演・執筆活動歴」を更新しました

執筆した外部記事8件へのリンクを追加しました。

■講演・執筆活動歴
http://tsuhan-l.cocolog-nifty.com/blog/cat20654074/index.html

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2020年9月 6日 (日)

ネット通販が牽引し通販・EC市場規模は8.8兆円と拡大

日本通信販売協会(JADMA)が8月末に発表した2019年度の通販・EC市場売上高(物販)は、前年比8.2%増の8兆8500億円と伸張した。伸び率は前年に比べ0.1ポイント下回ったものの、21年間連続で増加し、10年前に比べておよそ2倍の規模に達している。小売り業全体に占める通販・ECのシェアも拡大し、こちらも10年前の2倍に当たる6.1%となった。新型コロナウィルスの影響で店舗販売が不調に陥る中、ステイホーム需要で通販・ECの伸びは続いており、今後小売り業におけるシェアはいっそう拡大していくと思われる。

■1強のアマゾンをはじめBtoBや家電、テレビ通販、有店舗企業などが好調

日本流通産業新聞の「2019年度売上げ高ランキング」によると、トップを独走するアマゾン(日本事業)1強の構図は今回も変わっていない。売上高は1兆7600億円まで伸び、存在感をいっそう強めている。アマゾン以外では、アスクルやミスミグループ、大塚商会など、ここ数年安定した強さが目立つオフィス通販のBtoB企業が市場の牽引役となった。

ジャパネットホールディングスやジュピターショップチャンネル、QVCジャパンといった専門チャンネルを持つ大手テレビ通販企業も好調で、中でも家電が中心のジャパネットホールディングスは前期に続き2000億円越えを果たした。価格が高めな家電商材により、消費増税前の駆け込み需要をつかんだことも奏功した。実店舗を保有する家電通販企業にも勢いが見られ、ヨドバシカメラやビックカメラも上位に位置している。

店舗とネットのオムニチャネル連動を手がける衣料品や家具、雑貨系企業も増収が続く。ユニクロやニトリ、良品計画などはネット通販比率拡大への取り組みが貢献し、いずれも前年比2桁増と大幅に伸びた。

■ネット販路を強化するもカタログ通販は軒並み不調

一方でカタログ発行を手がける総合通販企業は不調が続き、売上高の減収が目立つ。千趣会が前年比14%減だったのをはじめ、ベルーナ、ディノス・セシール、ニッセンホールディングス、フェリシモなどが軒並み売り上げを落とした。昨年は大手用紙会社による紙の一斉値上げもあり、ベビー用品のコンビネクストのようにカタログ事業から撤退する動きもあった。

カタログ通販各社は誌面との連動サイト構築や専用アプリ導入などさまざまな施策でネット通販販路の強化を進めるが、成功の兆しはなかなか見えてこない。手間とコストがかかるカタログを削減しつつネットへのシフトに取り組むものの、売り上げでは主力媒体のカタログにまだ依存しているため、バランスを考えながら模索している状態といえる。

■物流や決済、コロナによる対応なども課題に

通販・EC各社にとって、今後の課題も山積みといえる。配送料の高騰は今年も続いており、各社とも大きな負担になっている。ステイホームで配送料は増えているのに、物流センターではコロナ感染者が出て配送業務が停滞するなど、これまでにない問題も発生した。ただ、配送負担の軽減につながる施策として、再配達の削減を目指した「置き配サービス」需要が増大。コロナ禍により荷物受け渡しの非対面を希望する人が増えたことで、アマゾンや楽天、ヤマト運輸など配送各社が置き配サービスを加速させるなど、業界挙げての取り組みが功奏し始めている。

【執筆関連記事】
≪LOMO≫再配達不要の「置き配」、通販・宅配会社のサービスや専用ボックスとは?
https://limo.media/articles/-/19016

昨年から今年にかけてはスマホアプリを使ったキャッシュレス決済も急速に進み、大手ECモールやコンビニ、携帯キャリアなどが次々に参入。通販事業者も決済手段の見直しや拡充を迫られそうだ。

コロナによる影響への対策も不可欠で、多くの通販・EC企業が外出自粛による購買意欲の低下や新たなニーズの掘り起こしについて懸念。従業員や関係者の感染防止対策と事業の維持・拡大のバランスなど、リスク管理に絡む経営施策も重要な課題となりそうだ。

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2020年6月21日 (日)

コロナ影響下、「Stay home」ならではの発見や掘り出し物

3ヶ月以上におよぶ「Stay home」の日々がほぼ解禁され、社会は少しずつ日常生活を取り戻しつつあります。私にとってこの時期は、家族のテレワークが続くなどいつもと比べやや慌ただしさは感じたものの、それほど大きな変化はありませんでした。仕事についてはもともとzoomやチャットを利用することが多く、「Stay home」状態になってからは打ち合わせやインタビューもオンラインで済ますようになりました。オンラインセミナーもいくつか受講し、9月には自分が所属する団体が主催するオンラインセミナーを企画中です。

ただコロナの影響で、食事会や飲み会、ショッピング、趣味の映画・舞台鑑賞といった楽しみは諦めざるを得ませんでした。その分、いつもよりもECを活用することになり、改めてその利便性を再確認した次第です。「Stay home」中は国内で通販やECの需要が急増し、物流網もパンクしそうな状態だったそうですが、これがきっかけとなり収束後も安定した需要が続くことを願っています。

デパ地下にも行かれないため、ECでは主に食材やお取り寄せのお菓子などを注文しましたが、「Stay home」中ならではの発見や“掘り出し物”もありました。

1つは、本来であれば街角の路上で販売されている雑誌「ビッグイシュー」です。ホームレスの自立を応援する事業のためバックナンバー以外は路上販売に限られていましたが、コロナ禍を受け4月から「コロナ緊急3ヶ月通信販売」が始まったのです。

ネットでの購入者に3ヶ月分の計6册(3,300円)を毎月郵送し、外出自粛のため活動できない販売者に売り上げを支給する仕組みで、2,000人が申し込めば1人当たり4万6,000円程度の現金を給付できると試算していました。初の試みのため不安を抱えてのスタートだったといいますが、申し込み目標数を大きく上回り、5月末時点で9,000人を超えたとのことです。私は「ビッグイシュー」を飯田橋で購入することが多かったのですが、外出自粛になったため4月には「コロナ緊急3ヶ月通信販売」を申し込みました。

「ビッグイシュー」は社会・政治・文化・芸術など主に海外の幅広い話題を取り上げていて、濃い内容と高い品性を有する素晴らしい雑誌です。ホームレスの自立支援だから購入するということだけではなく、日本では激減してしまったハイクオリティの雑誌ゆえに固定ファンが付いているのだと思います。引き続き「第2次・コロナ緊急3ヶ月通信販売」の参加募集を行うことが決まったそうなので、こちらもすぐに申し込みました。

【ビッグイシュー日本】
https://www.bigissue.jp/

もう1つは、クラッシックピアノ演奏者・辻井伸行さんのオンラインコンサートです。これまではチケット売り出しの瞬間にパソコンの前で待機していても、どうしても入手することができませんでした。ところが劇場でのコンサートが中止に追い込まれたため、6月の毎日曜日夜に初のオンラインコンサートをストリーミング配信することになったのです。第2夜の「ショパン」と第3夜の「リスト」のチケットを「e+」でカード決済し、このために購入したヘッドフォンも使って至福の時を過ごしています。

【辻井伸行】
https://avex.jp/tsujii/

ただ、アクセスが集中したため第2夜の「ショパン」は時間になっても視聴できず、20分以上経ってからのスタートとなりました。ツイッターを見たところ、視聴者たちはお酒などを準備してパソコンの前で楽しみに待っていたのに始まらず、私と同様不安にかられたようです。トラブルにより視聴可能時間は予定より1日延長されたものの、翌日の午後になるまで視聴者には何の説明も連絡もありませんでした。今後はコンサートや舞台のオンライン視聴も増えるでしょうし、運営者には不具合を起こさないような準備と覚悟を求めたいものです。

ともあれ、第2波襲来の危惧もある中、withコロナ時代の新たな楽しみや発見に引き続きトライしていきたいと思っています。

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2020年5月18日 (月)

タイと日本の「個人情報保護法」、EUの「GDPR」の影響を受け厳格化

タイでは今年の5月27日から、国内初となる「個人情報保護法」の適用が開始される。初めて導入されたこの個人情報保護法は昨年5月に施行され、今後2年間で政令やガイドラインなどの規定が制定される見込みだ。欧州連合(EU)の「一般データ保護規制(GDPR)」の影響を強く受けており、タイとEC取引する日本企業などにも法令遵守が求められるようになる。一方、日本でも3年に1度の「改正個人情報保護法案」が国会に提出されており、成立後はガイドラインなどの整備を経て2年以内の施行を目指す。

■タイでは初となる個人情報保護法が今年5月からスタート

タイの個人情報保護法は2018年に適用が開始された「GDPR」に準拠した形で、日本の個人情報保護法と比べるとかなり厳しく幅広い規制内容となった。このほど改正される日本の個人情報保護法では定められていない規制がいくつか見られるので、関連する日本企業は理解しておく必要がある。

まず挙げられるのはGDPRと同じように、位置情報やオンライン識別子(クッキーやIPアドレス)が個人情報の定義として含まれそうなことだ。現在、日本の法律ではクッキー単体は個人情報に含まれていないが、タイでは詳細はまだ公表されていないもののGDPRに沿ったものになるとみられる。

また、タイの場合は、個人情報を収集する前段階で提供者への情報提供が義務化されていて、収集の情報を明示する「情報提供義務」が生じる。日本では収集前の義務は強く定められていないが、タイでは必須となっている。

タイの個人情報保護法の罰則については、「民事賠償」「刑事罰」「行政罰」があるが、日本の法律と違い刑事罰では取締役や管理職といった個人も対象になりえる。最も重い場合は1年以下の懲役か100万バーツ以下の罰金、または両方で、身柄拘束の可能性もあることを念頭に置いておくべきだ。

■ネット通販などを手がける日本企業にも適用される「域外適用」

タイ国内に現地法人などが所在していなくても、例外として個人情報保護法が適用されるものに「域外適用」がある。GDPRと同様に、域外適用を受ける際には原則としてタイに拠点を有する「代理人」を置かなくてはならない。

「域外適用」の例としては、日本所在の企業がタイ在住者に対してインターネット通販などで注文を受け、商品や役務(有償・無償)を提供するケースが挙げられる。特にタイ語やバーツ価格が表示されていれば、現地での営業活動とみなされてほぼ確実に適用される。

「域外適用」は、日本所在の企業が現地で個人情報を取得・追跡する場合も対象となる。クッキーやIPアドレスの情報を収集して行動追跡やデータ解析を行い、ターゲッティング広告を出しているケースなどが考えらる。

タイに子会社などを持つ企業にとっては、「国外移転」にも注意が必要だ。個人情報が国外に移転された時の規制で、タイの法人が現地で収集した個人情報を海外へ送り海外で利用する場合に適用される。例えば、現地子会社が日本本社に従業員や顧客の個人情報を送信し、本社がサーバーで管理する場合などが該当するとみられる。

■日本の改正案では消費者の権利拡大や第三者提供時の制限を強化

日本の個人情報保護法も年内に改正案の内容が決定するが、タイほどではないものの、GDPRにかなり近づいたイメージが強い。これまで消費者が抱いていた不満に対し、要望をかなりすくい上げた内容となったともいえる。

まずは消費者本人の関与を強化する観点から、個人データの利用停止や消去請求にかかわる消費者権利の範囲を拡大した。これまでは企業の努力義務とされていた消費者からの個人情報の利用停止・消去請求への対応は、義務化されることになる。

先般、大きく世間の注目を集めた個人情報の取り扱い方についても、消費者の要望に応えた形となった。「提供元」では個人データに該当しないものの、「提供先」が持つデータと合わせれば個人データが生成される場合などに関し、規定を盛り込んだ。就職情報サイト「リクナビ」で問題になった事例を踏まえたもので、どちらか片方のデータ単体では個人データに該当しなくても、第三者提供を行う場合は事前に本人の同意を義務付ける。例えばクッキー情報など、提供先で個人データとして突合することが明らかな情報については、 第三者提供を制限する規律が適用される。

また、現在は除外されている6カ月以内に消去する「短期保存データ」に関しても、個人データに含めて開示や利用停止請求の対象とする。さらに、現在は努力義務となっている「個人情報漏洩報告」も、一定件数以上の要件に限定するなどの許容部分はあるものの、改正後には個人情報保護委員会への報告と本人への通知が義務化される。

■ビッグデータの利活用促進に向け「仮名加工情報」も新設

改正案は全体的に消費者の個人情報保護を強化する内容となったが、一方でビジネス場面などにおいてビッグデータを利活用しやすいように、データの利用推進や分析促進の観点から「仮名加工情報」が新設された。個人データから名前などを削除し、他の情報と照合しないと特定の個人を識別できないように加工した類型が対象となる。

「仮名加工情報」は事業者内部での分析に使う場合に限られるものの、利用目的の特定・公表を前提に、開示請求や利用停止請求への対応が緩和される。また、加工により個人を特定するリスクが低いため、収集時には想定しなかった利用目的でも取り扱うことが可能で、利用目的の変更も認められる内容となっている。

■タイと関連がある企業は両国の法律への目配りと対応が不可欠

一部例外はあるものの、タイでも日本でも個人情報保護法はGDPRに沿った内容で厳格化が進んでおり、適用される企業にとっては法令への整備が不可欠だ。中でもタイで事業を手がける企業にとっては、どちらの法律もカバーしながら、今後明らかになっていく詳細規定の確認と迅速な対応が求められる。

(記事・渡辺友絵)

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2019年5月26日 (日)

「プロフィール」「講演・執筆活動歴」を更新しました

■プロフィール
http://tsuhan-l.cocolog-nifty.com/blog/cat20654084/index.html

■講演・執筆活動歴
http://tsuhan-l.cocolog-nifty.com/blog/cat20654074/index.html

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2019年5月 6日 (月)

電子マネーの戦国時代が到来、市場は多様化・複雑化で混乱状態に

カードやスマホアプリを使った電子マネー事業に各社が次々と参入し、まさに戦国時代の到来といった混乱状態だ。混雑したレジでもキャッシュレスで素早く支払え便利な一方で、多様化・複雑化による使いにくさもあり、多くのユーザーはまだ様子見状態といえよう。今秋実施される消費増税の5%還元策や来年に迫ったオリンピック・パラリンピック対応など、政府主導のキャッシュレス推進施策は企業にとって追い風であり、今後の電子マネー市場はさらに激戦が続くだろう。

■理解しにくい各社で異なる電子マネーのチャージ・支払い方法

電子マネーの種類や入手・チャージ方法、使い方は各社で異なり、複雑化しすぎていると言っても過言ではない。まずは電子マネーの形状・タイプからして「会員カード型」「EC向けバーチャルカード型」「クレジットカード一体化型」「スマホアプリAndroid型」「スマホアプリiPhone型」、さらには「キーホルダー型」など幅広い。

チャージ・支払い方法はより複雑で、企業や発行している電子マネーの種類によって違ってくる。以前は電子マネーといえば、「楽天Edy」「nanaco」「Suica」のように現金による事前チャージの「プリペイド型(先払い)」だった。しかしそれらがクレジットカードと一体化し、それぞれが「楽天カード」「セブンカード」「ビューカード」からチャージできるようになった。さらにスマホアプリに搭載しお財布代りに使えるようにも進化したが、こちらは事前登録した銀行口座やクレジットカードでの決済が基本となる。

また、「電子マネー」というひと言ではくくりにくくなっている。たとえば楽天1社だけでも、①事前チャージ型の「楽天Edy」②「楽天Edy」が付いた「楽天クレジットカード」③クレジットカード払いのスマホアプリ「楽天ペイ」④「楽天ペイ」内の電子マネーで個人間送金などに使う「楽天キャッシュ」…と複数の電子マネーがあって、なかなか理解しにくい。

「楽天ペイ」のようにクレジットカードで一括払いする電子マネーは「ポストペイ型(後払い)」と呼ばれ、JCBをはじめ多くのカード会社が発行している「QUICPay」や、NTTドコモが提供する「iD」が該当する。

またスマホアプリ決済を手がける「ペイペイ」や「LINEペイ」も、後発組だが高額の還元キャンペーンで知名度を上げている。チャージ・支払いについては、ヤフー系の「ペイペイ」は銀行口座と「ヤフー!JAPANカード」から、「LINEペイ」は銀行口座で対応する。「LINEペイ」はスマホアプリに加え、JCBと提携したプリペイドカード「LINE ペイカード」を発行するなどの施策を展開している。

携帯電話キャリアも電子マネーの強化に余念がない。携帯料金との合算で後払いできることはクレジットカードを持てない契約ユーザーには大きなメリットで、利用者の裾野拡大につながる可能性がある。NTTドコモは「d払い」、auは「au Pay」をスマホアプリで提供し始めた。auは「au WALLET プリペイドカード」に現金で事前チャージした電子マネーと「au Pay」の残高を連動できるため、使い勝手もよい。

■電子マネーの浸透には加盟店舗拡大やユーザー意識向上が不可欠

さらに昨今導入され注目を集めているのが、手数料不要の「個人送金機能」といえよう。友だちと飲食後に割り勘の金額を電子マネーとして送り合えたり、フリーマーケットのCtoC取り引きの売上金を送金したりすることが可能だ。「LINEペイ」や「ペイペイ」が先行し、今年3月には「楽天ペイ」も導入している。

チャージに関しては大手コンビニのレジや店内機器、セブン銀行ATMをはじめ、各電子マネー系列のスーパーや駅ビルなどで対応している。ただ電子マネーの中には、店内機器を経由した後にレジでチャージしなくてはならないといった面倒なものもある。チャージ金額や1日に使える金額に上限も設けられていて、コンビニでは1日あたり4,000円までしか利用できない電子マネーも多く、やや物足りない。

支払いはその電子マネーの加盟店舗でアプリを起動し、レジでQRコードかバーコードを提示する手法で特に難しくはない。問題なのは利用できる店舗がまだまだ少ないという点で、今後の最優先課題と言えるだろう。コンビニはだいたい開拓できているものの、スーパーはほぼ系列店のみであり、飲食店については需要が高そうなファストフード店やファミレスではほとんど使えない。そういった面では、JCB加盟店ならどこでも利用できる「LINEペイカード」や、Mastercard加盟店で使える「au WALLETプリペイドカード」は今のところ優位性が高い。

また残念ながら、現状では高額キャンペーンでもたらされる“おトク感”で誘引されているユーザーが目立つ。電子マネーが日本社会に浸透し成熟した決済手法となるためには、ユーザー自身が電子マネーの持つ本来の利便性やメリットに気付くことが重要といえよう。提供する企業も目先の特典だけでユーザーを獲得するのではなく、機能性向上やセキュリティ対策強化、チャージや利用が可能な店舗の拡大に注力するなど、電子マネーが国内に根付くための地道な努力が求められる。

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2018年9月 8日 (土)

EC躍進し市場は初の7兆円超え~老舗カタログ通販の業績は深刻化

通販・EC市場の2017年市場規模は前年比8.8%増の7.5兆円(日本通信販売協会発表)と大きく伸び、19年間連続の成長を遂げた。独走するトップのアマゾンを筆頭に、BtoB企業や家電系企業、大手テレビショッピング企業、ファッション系EC企業などが売り上げを伸ばしたことが寄与した。一方で紙媒体を発行する老舗通販企業はベルーナを除いて軒並み減収に陥り、くっきりと明暗が分かれた。

BtoBではアスクルを筆頭にミスミグループ本社や大塚商会、MonotaRo、カウネットが前年度に続きそろって増収を維持。ヨドバシカメラやビックカメラといった有店舗家電通販も好調だった。専門チャンネルを持つジュピターショップチャンネルやQVCジャパン、紙媒体展開にも強いジャパネットホールディングスなどの大手テレビ通販トップ3が5~7%台の増収を果たした。ジャパネットHDの売上高は1929億円と、2000億円台に迫る勢いになっている。

ファッション系ECでは、「ZOZOTOWN」を運営し勢いが止まらないスタートトゥデイをはじめ、店舗とのオムニチャネル化に注力する有店舗企業の増収も目立つ。ユニクロやニトリ、丸井など衣料や生活用品・家具を扱う店舗は在庫やデータの一元化を通じてネットと店舗の相乗効果を引き出し、増収につなげた。

スタートトゥデイといえば、内蔵センサーで詳細な身体測定数値が分かる「ZOZOスーツ」が話題を呼んだが、今後はスマホアプリやAIなど、同じような最先端技術を駆使した施策に取り組む。同社は今年、「ZOZOスーツ」をフックにプライベートブランドの製造小売業(SPA)に参入しており、SPA企業であるユニクロも含め衣料品EC分野は激戦場となりそうだ。

こういった動きの中、中高年を顧客軸とするベルーナ以外の老舗カタログ通販では各社とも苦戦が続く。長期にわたり売上高が1000億円をゆうに超えていた千趣会とニッセンホールディングスは、大幅減収に加えて損失にも歯止めがかからない。

千趣会は減収及びセール品増加などによる原価率の悪化が影響し、2017年12月期は42億円の営業損失が発⽣。今年4月には大丸や松坂屋百貨店を傘下に持つJ.フロント リテイリングとの資本業務提携解消を発表し、地域経済活性化支援機構の力を借りて再建に取り組むことになった。出産・育児といった自社が強みを持つ衣料ジャンルに注力しブランド構築やカタログ創刊を目指すが、業績回復への道は遠い。

ニッセンHDの2018年2月期の営業損失は53億円だった。総合カタログを配布する形からEC主体型に戦略を転換し、得意分野である大きなサイズの衣料品強化などを通じて再生を図る。4月にグループ会社のシャディを売却したことで今期は黒字転換を予想しているものの、売却により通販事業規模が大幅に縮小することもあり、利益を確保できるかどうかは微妙な状態だ。

1970年代から続くビジネスモデルである百貨店通販事業も、終焉を迎えつつある。多種多様なカタログを発行し業界を牽引してきた三越が取り組む三越伊勢丹通信販売は、来年3月末で営業を終えることになった。収益力低下や顧客高齢化、ネット対応の遅れなどにより、ネットが主戦場の新興EC企業に太刀打ちできない状態が続いていた。
千趣会やニッセンHDに限ったことでなく、ここ数年間老舗通販の業績落ち込みは激しかったが、今や危険水域レベルに迫るほど深刻化している。ネット専業企業が勢いを増し通販・EC業界の市場規模が拡大する中、業界を牽引してきた老舗通販各社は平成終了後の新時代に生き残れるのか。まさに正念場を迎えている。

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2018年7月 6日 (金)

通販の「広告表示管理」、学会の全国大会で法務部会がプロジェクト発表

私が所属している「日本ダイレクトマーケティング学会(JASDM)」主催の「第17回全国研究発表大会」が、今年は慶応大学で開催されました。毎年1回開かれているもので、第1回目から参加していますが、さまざまな大学のキャンパス内で終日過ごせるうえ学食でランチも楽しめる貴重な機会といえるでしょう。

慶応大学矢上キャンパスは横浜の日吉キャンパス校内を抜けてさらに住宅地を通り、急なアップダウンの坂を経由した高台にあります。駅から15分以上かかりますが、理工学部や大学院の校舎が整然と並び、猛暑日ではあったものの日陰にいると高台ならではの爽やかな風を感じることができました。

今大会のテーマは「AI時代の人とデータの協働~データ解析が切り開く未来~」。日頃の自分にはほとんど馴染みのない統計学やデータサイエンスを中心に、基調講演や特別講演が行われました。「生物統計学」というこれまで聞いたことのない言葉をキーワードに、高い価値を生むダイレクトメール配布のノウハウをいかに見出すかなど、通販と直結した内容もあって興味深く拝聴しました。

また当日は学会員の研究発表として、私も幹事を務めるJASDM・法務部会が手がけた「自主研究プロジェクト」の報告も行われました。研究テーマは「通販媒体の記載事項に関して通信販売業者に求められる確認措置とは?」で、私を含む法務部会プロジェクトメンバー5人の代表である執筆者の(株)エフシージー総合研究所・矢野誠二さんが発表しました。

同プロジェクトはJASDMの平成29年度研究プロジェクトとして採用されたもので、通販企業やネット通販企業が広告媒体で商品を販売する際に“表示における通販実務のリスク管理”をいかに適切に行うかがテーマです。このところ景品表示法違反で通販企業などの行政処分が相次いでいますが、不適切な広告表示はメーカーや卸売業者だけでなく販売主体である通販企業やネット通販企業も責任を負うことになります。

今回のプロジェクト研究では通販企業などが事前に講ずべき媒体表示管理上の確認措置をテーマに、「商品決定」「媒体製作」「商品出荷」「販売後のリスク管理」の4段階におけるステップでそれぞれ実施しなくはならない留意点やルールについて解説しました。また自社の広告表示管理について通販企業へのアンケートを実施し、その回答をグラフ化したものも掲載しています。JASDMのWebサイトでは、実務者の参考になるように今後成果物をPDFファイルとしてアップし無料ダウンロードできるようにする予定です。

さらに、アンケートに協力してくださった通販企業に配布できるように、プロジェクト内容を成果印刷物として冊子にまとめました。販売はしませんが、今回の全国大会プロジェクト発表の参加者には配布させていただきました。7月19日には「通販媒体の表示管理」のテーマで「JASDM法務部会オープンセミナー」を開催し、参加者にはこの冊子を無料で提供します。詳細はhttps://www.dm-gakkai.jp/kenkyubukai/homu.htmlをご参照ください。
 
 
「通販実務のリスク管理手法」(A4版・128ページ)
Gazo


“媒体の広告表示”は紙媒体やテレビ、ネットなどで商品を販売する通販・ECにおける永遠のテーマであり、最大のリスクともいえます。景品表示法だけでなく特定商取引法や医薬品医療機器等法などさまざまな関連法律で規制されているため、リスク管理手法の確認・管理は販売事業者にとって不可欠であり避けて通ることはできません。行政の規制がより一層強化される中、改めて業界全体で広告表示管理の適正化に向き合って欲しいと思います。

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2018年2月23日 (金)

専門的話題とガールズトークで盛り上がった「物流女子会」

バレンタイン翌日夜、港区芝浦にあるイタリアン&ワインのお店で内輪の「物流女子会」を開きました。知り合いの物流やECに携わる女性たちと「お酒でも飲みながらじっくりと情報交換がしたい」と考えていたことがようやく実現したもので、物流やECという専門的な話題だけでなく最後は女性ならではのガールズトークでも盛り上がりました。
 
参加者は大手不動産企業で大規模な物流倉庫案件などを中心に手がけるKさん、大手の通販・EC企業の物流倉庫に仕分け機械などのマテハン(マテリアルハンドリング)機器を導入している物流ソリューション企業のTさん、大手ECモールやEC事業者からの相談を受けながらこれら企業をつなぐ役目を担っている業界団体代表のSさん、そして物流こそ通販・ECの最大のカギであると信じている私、の4人。年齢層はまちまちではあるものの、“女子会”の名称通り全員女性です。お店の店長さん(おそらく経営者)もワインソムリエだけでなくウイスキーソムリエの資格も持つという女性で、フランス、イタリア、チリなどさまざまな国のおすすめワインをわかりやすく説明しながら次々についでくださいました。いつも私が飲んでいるようなリーズナブルワインとはひと味もふた味も違う美味しさで一同感激しながらグラスを重ね、女子会というだけあってお料理も存分に堪能しました。実は会費制の「物流女子会」と聞いたKさんの上司の方が、ワンランクアップするようにと差額をサポートしてくださったとのこと。幹事役の彼女にも上司の方にも感謝、感謝です。
 
このようなお洒落な飲食の場ではあるものの、話題はなんといってもまず“物流”。大手通販企業が短期間で最近埼玉県にオープンした大規模物流センターの立ち上げや運営に関する苦労話や、首都圏3県内に大型倉庫を構えられるような土地が少ないという悩みや、倉庫内で機械と人間がコラボすることによりどれだけピッキングミスを減らせるかなどのハードな課題や解説が、ワイングラスを片手に参加者から次々に語られました。また、物流倉庫スタッフの業務負担を軽減する「ロボットスーツ」の活用や、人間に代わりAIはどこまで倉庫内業務が可能なのかといった会話も。さらにファミリーマートがつい最近実証実験を行った「電子タグ専用セルフレジ」や、米国でオープンしたアマゾンの「レジ不要店舗」など、最先端の流通テクノロジー技術改革も話題にのぼりました。こういったテクノロジーの取り組みは、物流とも関わりが深いといえるでしょう。
 
ワインを数本空けたあたりから、専門的な物流の話題は少しずつガールズトークへと移行。30歳を間近に控えたTさん以外の3人はすでに子育ても終えた人生経験たっぷりな“ガールズ”なのですが、ちょうどTさんが婚約したばかりという報告をきかっけに盛り上がりは最高潮に達しました。聞いてみるとTさんがお相手と知り合ったのは、前述した大手通販会社が物流センターを立ち上げたまさにその場所。ハードな“戦闘態勢”時期に一ヶ月以上にわたり現場で一緒に仕事をしたのがきっかけで、交際に至ったとのことでした。新規稼働時期が決まっている物流センターの立ち上げはさぞ過酷な業務だったろうと思いますが、婚約というハッピーな結果を迎えることができたのは物流女子ならではの天からの贈り物かもしれませんね。出会いのきっかけやその後の経緯などを聞き、ご本人よりもむしろ他の3人の方が興奮していました。以上、年代を超えた「物流女子会」のご報告でした!
 
通販・ECに限らず流通業全般でもやはり物流は男性中心の世界とされていて、それが現実でもありますが、他の業種や業務と同様に少しずつそのジェンダーの垣根も低くなってきている気がします。経済産業省出身のSさんによれば、省内には物流担当の女性管理職の方もいらっしゃるそうです。通販・ECや店舗といった流通業界の顧客の多くは女性ということもあり、深い関わりを持つ物流業界でも、女性ならではの細やかな感性を生かしながら大胆な意識改革を進めて行ってくださればと思います。

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